思い草、その正体は南蛮煙管(ナンバンギセル)万葉集にも読まれる日本古来の寄生植物
「 青きもの 身にはまとはず 思草 すすきの中に ひそやかに咲く 」 中嶋信太郎
万葉種の中でも読まれるこの”思い草”
その正体は南蛮煙管(ナンバンギセル)という植物です。
こんな花ですが、あまり見たことある人は少ないかも(^_^;)
万葉集などの和歌の中に詠まれるように、以前は日本中で見られていた一般的な植物ですが、現在は絶滅の心配があるレッドデータリストに入っています。
なんだか変わった形の植物ですよね(;゚Д゚)
それもそのはず、このナンバンギセルは葉や茎を持たない完全寄生植物なんです。
目次(*´▽`*)
ナンバンギセルってどんな植物?
ナンバンギセルはハマウツボ科ナンバンギセル属(学名:Aeginetia indica)の寄生植物で一年草です。
ナンバンギセルが含まれる”ハマウツボ科”の多くは寄生植物か半寄生植物です。
”半寄生植物”というのは、水と栄養の一部を宿主に依存して、自らも光合成で栄養を作り出す仲間。別のグループですがクリスマスに利用されるヤドリギなんかが半寄生植物ですね(≧▽≦)
対して”完全寄生植物”というのは、自らは光合成をおこなわず、水の栄養も全部宿主任せ。貰い物だけで生活する仲間のこと。有名な完全寄生植物は世界最大の花”ラフレシア”があります。
ナンバンギセルもこっち”完全寄生植物”自らは栄養を作ることも、ひとりで生きていくこともできません。
そのため組織には葉緑素がなく色白の姿をしています。葉はあることはあるのですが、退化して土の中にちょこっと痕跡が残る程度となっています(^_^;)
ナンバンキセルギセル名前の由来
なナンバンキセルギセル、漢字で書くと『南蛮煙管』です。
これは南蛮人(いわゆる外人のこと)が使う煙管(キセル)に似た形から来た名前。キセルってのはこんなヤツね(・ω・)ノ
確かに似てますね。
でも、これは海外からキセルが入ってきたからつけられた名前。日本以古来から自生しているナンバンギセル。
古くは何と呼ばれていたかというと、『思い草』
大きなススキの足元にひっそりと咲く姿は、確かに物思いにふける姿を想像させますね。
そのため、花言葉も「物思い」そしてもう一つ「遠距離恋愛」
どの辺が遠距離恋愛なのか私にはよくわかりませんでした(^_^;)
ススキに寄生するナンバンギセル
ナンバンギセルの中心となる宿主はススキですが、近年この宿り主の減少でナンバンギセルは絶滅が心配されるレッドデータブックに記載されるくらいまで個体数が減ってしまいました。
でも、ナンバンギセルが寄生できるのはススキだけかというと、そんなことはありません。
ススキ以外のイネ科植物にも寄生することがあり、中でも陸稲やトウモロコシの畑で発生すると、栄養が吸い取られて収量が減ってしまうため害草として駆除の対象になっています。
イネ科以外にもミョウガに寄生することがあるそうです。
ナンバンギセルの生活サイクル
ナンバンギセルは1年草。8~10月ごろに花を咲かせ、実をつけます。
実が熟して種をばらまくと、株の命は終わり。種は一株に10万粒以上作られるといわれ、地面にばらまかれた種子は寄生できる宿主を見つけると
その根に寄生してじっと発芽の時期を待ちます。
ナンバンギセルの種は非常に軽く風に乗って広くバラまかれます。
でも、落ちた場所に運よく規制対象が生えているとは限りません(。-`ω-)
そのため、ナンバンギセルの種は非常に寿命が長く、宿主がいなかった場合でも、何十年もの間発芽能力を維持したまま、宿主が現れるのを休眠状態でじっと待っているんです(;゚Д゚)
自分で栄養を作らず、人任せの気ままな生活課と思いきや、寄生生活には寄生生活なりの苦労があるんですね(^_^;)
ナンバンギセルの育て方
寄生植物はなかなか育てにくいものが多いけど、その中でもナンバンギセルは山野草としても人気の高い植物です。
ナンバンギセルの育て方をご紹介します(≧▽≦)
ナンバンギセルを購入しよう
ナンバンギセルは寄生植物。山でとってきて育てることはできません。
それにレッドデータブックに記載されるほど、個体数が減少している植物です。自然のものは摘まないで、お店で購入しましょうね(; ・`д・´)
掘り上げても育ちませんよ!
とはいっても、そんなにメジャーな花ではないので、7~8月ごろに野草を扱う園芸店などを探してみましょう。
ナンバンギセルの種を採ろう
鉢植えのナンバンギセルの多くは、イトススキの根に寄生させて販売されていることが多いです。
普通のススキでもいいけど、鉢植えで観賞するにはデカすぎる(^_^;)
鉢植えで鑑賞したあと、花が終わると種ができます。完熟するのを待って、この種を採取しておきましょう。
実が開くと中の種は細かいので、種は果実ごと採取して袋に入れて冷蔵庫で保管します。
ナンバンギセルの種をまこう!
種の播き時は3月です。
寄生させる植物の根元の表土を外して、根をむき出しにします。その部分に採取してある果実を割って中の種をこすりつけるようにまきます。
あとは土を戻して優しく水を与えればOK。
いろんなイネ科植物に寄生するか実験してみるのも面白いですね(≧▽≦)
ナンバンギセルを育てるのは、宿主を育てること
ナンバンギセルは寄生植物なので、元気の育つかは宿主の健康状態に左右されます。
宿主のススキが根詰まりしている様子なら種まき前に植え替えをしておきましょう。宿主がススキなら肥料はほとんどいりませんが、薄い液体肥料などを与えて健康に育ててあげましょう。
鉢植えで育てるなら小型のイトススキに寄生させると管理しやすいですよ(≧▽≦)
植物の成長の謎を解明する?ナンバンギセルの研究
ナンバンギセルの発芽習性は謎に満ちています(。-`ω-)
この寄生に関する研究の中で「ストリゴラクトン」という全く新しい植物ホルモンが最近発見されました。
この「ストリゴラクトン」なんと、あらゆる植物の成長の仕方にかかわる重要なホルモンであることがわかり、注目を集めています。
もしかしたらナンバンギセルが人類が植物の謎を解くカギになるかもしれないですね(≧▽≦)
今後の研究に注目です!
まとめ
あまりに多く寄生されると成長が阻害されることもあるようです。熱帯では、大発生したナンバンギセルは陸稲やサトウキビの大害草として知られています(。-`ω-)
山の奥深くに生える。というよりも自然豊かな農村の野原などで観察できるようです。
ススキの足元でひっそりと咲く”思い草”探してみてはいかがですか?
英名は「 forest ghost flower(森林に咲く幽霊の花)」と呼ばれ、 中国・台湾・インドシナ・マレーシア・インドでも生育しているそうです。
確かに幽霊に見えなくもない(^_^;)
寄生植物の中ではかなり育てやすい方なので、ちょっと変わった植物を育てたい人はチャレンジしてくださいね。
では、皆様よい園楽を~(。・ω・)ノ゙
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