ヒペリカムってどんな植物?~品種の見分け方と特徴~

ヒペリカム表紙

まっ黄色な花を株いっぱいに咲かせ、秋には可愛らしい、つんととがった実をつける。

切り花でも人気の花木「ヒペリカム」

この名前を知らなくても、写真を見たら「ああ、あの花か、見たことある」ってなるんじゃないかな。

でもでも、これはどう?

実はこれ、ぜ~んぶ『ヒペリカム』

ヒペリカムっていうのは、グループの属名。

そして、どれもが園芸品種としてそれなりに利用されている。

見た目も利用方法も似かよっているから、実際に見かけてもどのヒペリカムなのか見分けるのは結構難しい(;´∀`)

かく言う私も、ちょっとあいまいだったので、自身の復習もかねて『ヒペリカムの仲間』についてまとめてみたよ。

『ヒペリカム』という名前の由来

属名はギリシャ語でhyper(上の意味)と、eikon(絵、像の意味)に由来する。

これは、古代、真夏の祭典時に悪魔を撃退するため像の上に置かれたことにちなむとされています。

ヒペリカムの特徴

ヒペリカムは、オトギリソウ科ヒペリカム属 学名:Hipericum

一年草から多年草、あるいは常緑~半落葉の低木が中心のグループ。

品種により大きさの違いはあるが、いずれもまっ黄色な花を咲かせます。

大きさはさまざまだけど、多くは1m程度。

主に世界の温帯地域に分布し、約300種が知られています。

ヒペリカムの種類

多くの品種が園芸利用されているヒペリカム。

その中でも、比較的日本国内で利用の多い8品種を紹介するよ(=゚ω゚)ノ

・セイヨウキンシバイ(ヒペリカム・カリシナム) H. calycinum

ブルガリア・トルコに自生する。

地下茎で広がる常緑低木。地下茎から40cm程度の枝を直立させる。

背丈低く広がることから、グランドカバーとしての利用が多い。

地面を這うような姿だったら、この『セイヨウキンシバイ(カリシナム)』の可能性が高い。

花は6~7月。

最近は、黄金葉の”ヒペリカム ゴールドフォーム”がカラーリーフとしても人気です。

春は黄金、夏にかけて徐々に緑が強くなり。寒さにあたるとオレンジに色づきます。



・キンシバイ  H. patulum

中国中南部に広く分布する品種。

0.5~1m程度の常緑~半落葉低木。6~8月にカップ状の黄色い花を咲かせる。

セイヨウキンシバイよりも背が高い。

ヒペリカムの仲間には、おしべの長いものが多いが、キンシバイの場合雄しべが短いのが特徴。

・ヒペリカム・ヒデコート H.Hidcote

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キンシバイの園芸品種と考えられているが、起源は不明。

キンシバイより樹勢が強く、花数も多い。

花が大きいため『大輪キンシバイ』とも呼ばれる。

栽培が容易なため、歩道の植え込みなどにも広く利用されます。

80~150㎝ほどに育ち、比較的寒さにも強く、北海道南部まで栽培が可能。

花時期は6~7月。

生け垣などで利用されているのはこれが多い。

・ビヨウヤナギ  H. monogynum(H.chinense)

美女柳(ビジョヤナギ)6寸鉢植え ビヨウヤナギ

中国原産

1m程度のやぶ状に育ち、枝の先端に雄しべの長い黄色い花を咲かせる。

古くから生垣樹として利用されてきた。

枝先がやや垂れ下がることから「ヤナギ」の名前があるが、柳の仲間とは無関係。

『美容』柳や『美女』柳とも呼ばれるが、間違い。

ビヨウヤナギの『ビヨウ』は、中国間の時代の宮殿〈未央宮(びおうきゅう)〉からきており、『美容』とはまったく関係はない。

6~7月開花、半落葉。春に新芽が出るとすべての葉が入れ替わる。

学名はH. monogynumとH.chinenseどちらの表記で書かれることもある。

キンシバイやヒドコートと同じように生垣で利用されるが、こちらはおしべの長さで見分けやすい。

・ヒペリカムトリコロル  H.Tricolor

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キンシバイと西洋キンシバイの交配で作られた園芸品種。

葉の縁が白ピンクに縁どられ、カラーリーフとして人気。

花も咲くが、ほかのキンシバイの仲間に比べると少ない。

斑入り種のため、他のヒペリカムに比べあまり大きくは育たない。

主に葉をカラーリーフとして観賞します。

・アンドロサエマム(コボウズオトギリ) H. androsaemum

西ヨーロッパ、北アメリかに分布。

赤やピンクの実を楽しむヒペリカムはこの品種の交配種。

実の色は品種によって、ピンク・黄色・白・茶色などカラフル。

花は5~7月に咲き、8~11月にかけて実る。

園芸品種の中には春と秋2回開花するものおあります。

高さは70~90㎝。

ほかの品種に比べて厚くかたい葉を持つ。

実のついた枝物は、切り花としても人気です。

(実を楽しめるヒペリカムには、ヒペリカム イノドルム(H×inodorum)もありますが、もともとはアンドロサエマムの交配種であり、販売時にも混乱しているので今回はアンドロサエマムにまとめさせてもらいました。上の写真にもイノドルムの園芸品種が混ざってるかもしれません。ご了承ください。)

・オトギリソウ H. erectum

 日本・中国・サハリンに分布する多年草。50~60cm。

花は小さく、7~8月に開花する。

古くから止血や洗浄、うがい薬として用いられる。

虫刺されには、生の葉をもんで塗ると効果的だといわれるが、薬を塗った患部を日に当てると、かぶれることがあるので利用する際は注意しよう。

  弟切草(オトギリソウ)の伝説

昔、鷹匠の兄弟がいた。

この家には長子にのみ伝えられる一子相伝の秘薬があり、この薬を使うと深い傷もたちどころに治ると有名だった。

ある日、とある鷹匠が薬の製法について聞いてきた。その鷹匠の娘と恋仲だった弟は、兄の秘伝の製法を盗み出し教えてしまう。

それを知った兄は激怒し、弟を切り殺してしまう。

その時の血しぶきが、今でもオトギリソウには黒色の斑点として残っている。

という物語。

このことから、オトギリソウの花言葉は「迷信」「敵意」「秘密」「恨み」となっています。

・セイヨウオトギリ(セント・ジョーンズ・ワート)H. perforatum

ヨーロッパ・北アフリカに分布。

ハーブではハーブティとして利用させれ、セントジョーンズワートと呼ばれる薬草。草丈は30~60cm程度。

花時期は6~8月。

perforatum の名は光にかざすと見える葉にある小さな窓(油点)に由来しています。

海外では軽度のうつ病の薬としても利用されるが、日本では薬としての登録はないので、ハーブとしての扱いになります。

ハーブティには精神安定の作用があるといわれています。


 セントジョーンズワートの伝説

西洋オトギリソウ(セントジョーンズワート)は暗黒や悪天候の象徴とされ、魔女たちにかかわりがある草とされた。

キリスト教では、聖ヨハネの殉教に結び付けられ、悪魔払いの力があると信じられていました。

葉にある黒点は、悪魔が針で突いた後だといわれています。

精神安定の薬草としての力が、悪魔や魔女と結びついたのかもしれないですね。

ヒペリカムの仲間まとめ

ヒペリカムの違い、理解できましたか?

実物を見てもそっくりで、わかりにくいかも(;´∀`)

簡単な特徴をまとめてみました。参考にしてくださいね。

ヒペリカムHipericum花期花の特徴樹高原産地
西洋キンシバイH.Calycinum6~7月おしべ短いほぼ無し~0.4mブルガリア・トルコ
キンシバイH.Patulum6~8月おしべ短いほぼ無し0.5~1m中国
大輪キンシバイ'Hidcote'6~7月おしべ短いほぼ無し0.8~1.5m園芸品種
ビヨウヤナギH.Monogynum
H.Chinense
6~7月おしべ長いほぼ無し~1.0m中国
トリコロル'Tricolor'6~7月おしべ短いほぼ無し0.4m園芸品種
コボウズオトギリH.Androsaemum5~7月おしべ長いあり0.7~0.9m西ヨーロッパ・北アメリカ
オトギリソウH.Erectum7~8月花小さいほぼ無し0.5~0.6m日本・中国・サハリン
セントジョーンズワートH.Perforatum6~8月花小さいほぼ無し0.3~0.6mヨーロッパ・北アフリカ

ヒペリカムの育て方

街路樹に使用できるくらいなので、基本的に丈夫な植物。

半日以上日が当たる場所に植え付けましょう。

土は、ふつうのお花用の培養土。

庭植えの場合は3割程度の腐葉土を混ぜて植え付けます。

アンドロサエマムだけは、夏の日差しが強すぎると、実がうまく熟せない場合があるので、夏は半日陰になる場所がおすすめです。

ヒペリカムの肥料

それほど多くの肥料は必要としません。

冬に与える寒肥を中心に与えましょう。

どこよりも詳しい『寒肥』肥料の与え方

ヒペリカムQ&A

ここからは、ヒペリカムでよく聞かれる質問にお答えしていきます。

花は咲くのに、ぜんぜん実が実らない・・・

可愛らしい実をつけるのは、ヒペリカム・アンドロサエマムだけ。

ビョウヤナギなどはほとんど実をつけることはありません。

実を楽しみたい場合は、品種選びを気をつけましょう。

ヒペリカムの実が真っ黒になっちゃう!

切り花などの、赤く色づいた実が黒くなるのは、たんに完熟したから。

中から種を回収することができるので、まいてみるのも面白いです。

鉢植えなどで、花の後の実が色づく前に真っ黒になってしまうのは、高温、もしくは日差しが強すぎる場合があります。

鉢植えの場合は風通しの良い半日陰に移動するといいでしょう。

地植えで動かせない場合は、寒冷紗などで遮光して保護してあげましょう。

もうすでに真っ黒になってしまった場合は、回復することはないので、先端を少し切り戻して新しい枝を吹かせます。

ヒペリカム・アンドロサエマムの仲間は切り戻すことで再び枝ぶきして、再び花を咲かせることができます。

秋は日差しや温度も落ち着いているので屋外でも実が色づきやすいです。

切り戻しが遅い場合は、寒さが来ることで開花まで至らなかったり、花が咲いても実まで成熟できないという場合もあります。

まとめ


今回はヒペリカムのいろいろについて紹介しました。

それぞれの品種についての紹介は結構あるんだけど、まとめて紹介しているページはなかったので、役に立つんじゃないかな。

ヒペリカムの分類については情報が少なく、不足な部分、間違いがあるかもしれません。

何かあればコメントか、Twitterに連絡もらえると嬉しいです。

では皆様、よい園楽を~~~~~~~~~~(≧▽≦)

参考図書

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